私たちについて

誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会声明

埼玉県在住のみなさん、埼玉県を愛するみなさんへ

 私たちは、埼玉県が様々な違いのある人々の共生を支える地域であることを願い、集まった有志の会です。私たちには生まれや育ち、身体や心の有り様など様々な違いがあります。例えば、経済状態、宗教、思想・信条、性、性的指向、年齢、民族、国籍などの違いです。それらの違いによって不当な扱いを受けてはならないし、いかなる差別も許されてはならないと考えます。

 21世紀は「人権の世紀」と言われるように、全ての人々の人権が尊重され、相互に共存し得る平和で
豊かな社会を実現することは人類共通の願いです。「埼玉県人権教育実施方針(挨拶) 」

 ここに示されているように、それぞれが大切にするものは何なのか、尊重されるべきものは何なのか、いかなる歴史に生きているのか学び合い、相互の理解を目指していくことが今ほど求められている時はありません。自分と異なる他者の存在に敬意を払い、交流し対話していくこと…それによって埼玉県に暮らす人々の多様性は力に変わります。"違いこそが豊かさ"であることをみんなが共有することによって埼玉県が活性化された魅力的な地域に生まれ変わっていくことを信じています。

 県内には、在日朝鮮人の子どもたちが学ぶ埼玉朝鮮学校があります。朝鮮学校では、子どもたちは、母国語(継承語)である朝鮮語や朝鮮の歴史や文化を学んでいます。こうした民族教育は、在日朝鮮人の人々にとって自らのルーツを確かめるためにもとても重要です。だからこそ、在日朝鮮人の人々は、朝鮮学校を大切に守り育ててきました。

 また、朝鮮学校では、この社会で生きる子どもたちのために日本の歴史や社会制度を学ぶカリキュラムが豊富に組まれ、日本の学校同様に子どもたちの成長と発達に資する生き生きとした教育活動が行われています。同校は、地域住民との交流を積極的に推進し、教育内容を公開する「交流ワークショップ事業」などを行い、朝鮮学校に関する理解を深める努力を続けています。

 朝鮮学校は法律上、各種学校としての認可となっています。そのため国公立や私立の一般の学校のような公的支援が極めて乏しく、財政上の困難を抱えてきました。そうした事情に鑑み、埼玉県は1982 年から私立学校運営補助金を支給し、朝鮮学校に通う子どもたちの学ぶ権利を保障するべくとりくんできました。しかし、県は2010 年に補助金の支給を打ち切ります。その理由は、当初は朝鮮学校の財政健全化に関する問題などでしたが、それらが解決しても支給中止が続いています。また県議会では2012 年に「拉致問題が解決するまで補助金の支給を行わない」という附帯決議もなされました(この間の詳細な経緯については別紙「朝鮮学校への補助金停止問題Q&A」をご参照ください)。これらは朝鮮学校に通う子どもたちとは何ら関係のない外交政治上の理由を持ち出すことによる不当な差別に他なりません。県下には、各種学校認可を受けている外国人学校として児玉郡上里町にあるTS校(Instituto Educacional TS Recreação)というブラジル人学校がありますが、同校には補助金が支給されています。なぜ朝鮮学校だけ、このような差別的で不公正な扱いを受けなければならないのでしょうか。放置されている不公正はまさに私たちの住む社会のあり方を問うものです。

 もちろん、拉致問題は極めて重大な人権侵害であり、速やかに解決をめざすべきものです。また、過剰なほどに報道されている朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発については、むしろ、被爆国である日本が先頭に立ち、全世界から核兵器を廃絶する運動の流れの中で解決すべきではないでしょうか。これらの問題を日本で生まれ、日本で暮らす子どもたちの民族教育を受ける権利の保障のあり方に、安易に結びつけるべきではありません。

 1996 年、埼玉県議会は全国に先駆けて「子どもの権利条約の普及啓発を推進する決議」を全会一致で採択しました。子どもの権利条約は、「教育についての子どもの権利を認める」ものとし(28 条)、「いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する」(2 条)、また民族的マイノリティらが「自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない」(30 条)と謳っています。私たちはこの条約の理念に共感するとともに、この決議を導いた県民、県議会を誇りに思います。そして以下に示されているように、教育行政が先頭に立ち、県内に住む全ての人々の人権尊重に向けて尽力していることに限りない敬意を払っています。

 「埼玉県人権教育実施方針」は、平成24 年3 月に改定された埼玉県の「埼玉県人権施策推進指針」の人権教育の基本的な方針に基づき、平成15 年3 月に策定した「埼玉県人権教育推進プラン」を改定したものです。特に今回の改定では、人権教育を推進する上での施策の方向性として、「あらゆる場を通じた人権教育の推進」「人権感覚の育成」「人権意識の向上」などを示す内容となっています。学校を始めとする教育機関等においては、本実施方針を活用し、児童生徒に人権尊重の精神を培う人権教育を推進してください。また、市町村においては地域の実情に応じ、本実施方針を参考にして、系統的・継続的に人権教育の推進に取り組んでください。(埼玉県教育委員会HP)

 互いの違いを認め合い、誰もが差別や不合理な扱いを受けることなく共に生きることが出来る社会そんな魅力的な埼玉県にするために私たちも努力していきたいと思っています。子どもたちの成長と発達は、県内に住む全ての子どもたちに例外なく保障されるべきものです。

 私たちは、埼玉朝鮮学校への私立学校運営補助金の打ち切りに反対し、支給再開を強く求めます。

2018年2月1日

誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会