埼玉県議会・岡重夫議員に公開質問状を送りました

 去る2月26日に開催された埼玉県議会定例会での代表質問で、岡重夫議員(無所属県民会議)が埼玉朝鮮学校への補助金支給の問題を取り上げ、そのなかで私たち「有志の会」の活動にも触れられました。

「埼玉朝鮮学園の補助金支給を再開するのは、まず北朝鮮が拉致被害者を全員返すことが先決で、人権問題を訴える有識者のみなさんこそが、北朝鮮に向かって日本人拉致問題の全面解決を訴えるのが先なのではないでしょうか」(埼玉県議会議会中継より)

 岡議員がこの問題について関心をもってくださっていることはたいへん意義のあることです。

 一方、「有志の会」は、拉致問題という政治の問題を、日本で生まれ、日本で暮らす子どもたちの民族教育を受ける権利の保障のあり方に安易に結びつけるべきではないという立場で活動しています。

 そこで岡議員に対して、1) 日本に生まれ、日本に暮らす児童生徒の学ぶ権利を支援する補助金を停止することが、朝鮮民主主義人民共和国による拉致問題の解決に具体的にどのような効果があるか、2) 補助金の停止により厳しい財政状況の中で学ぶことを余儀なくされることで、埼玉朝鮮学校児童生徒の学習権が侵害されていること、の二点について公開質問状をお送りしました。詳細は下記をご覧ください。

 岡議員より回答をいただきましたら、またご報告させていただきます。


2020年5月11日

埼玉県議会
議員 岡 重夫様

公開質問状

令和2年2月定例会(2月26日)における代表質問について

 平素より、埼玉県民の命と生活を守るお働きにご尽力くださり、まことにありがとうございます。

 去る2月26日に開催された埼玉県議会定例会での代表質問において、埼玉朝鮮学園への補助金支給の問題を取り上げていただいたことに心より感謝申し上げます。またその際に、私ども「誰もが共に生きる埼玉を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会」の活動に言及いただき、まことにありがとうございました。議員がこの問題について深いご関心をお持ちくださることはたいへん意義のあることと考えます。

 議員は代表質問の中で、「埼玉朝鮮学園の補助金支給を再開するのは、まず北朝鮮が拉致被害者を全員返すことが先決で、人権問題を訴える有識者のみなさんこそが、北朝鮮に向かって日本人拉致問題の全面解決を訴えるのが先なのではないでしょうか」(埼玉県議会議会中継より)とご発言されております。

 ご承知のことと存じますが、私どもは2018年2月1日付声明において、「もちろん、拉致問題は極めて重大な人権侵害であり、速やかに解決をめざすべきものです。また、過剰なほどに報道されている朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発については、むしろ、被爆国である日本が先頭に立ち、全世界から核兵器を廃絶する運動の流れの中で解決すべきではないでしょうか。これらの問題を日本で生まれ、日本で暮らす子どもたちの民族教育を受ける権利の保障のあり方に、安易に結びつけるべきではありません」と明言しております。

 補足するならば、拉致問題の解決のためには外交政策がきわめて重要です。私どもも、国会議員と連携をとりつつ、この問題を共有するなど、解決に向けて尽力してまいりました。微力ではございますが、こうした活動はこれからも続けていきたいと考えております。

 私どもの活動の理念は、埼玉朝鮮学園への補助金支給の問題を拉致問題等の政治的問題と関連づけることは、埼玉県がこれまで推進してきた人権施策や大野知事の掲げる「あらゆる人に居場所のある共生社会の実現」という目標、また人種差別撤廃条約や子どもの権利条約など日本が批准した人権諸条約と矛盾し、埼玉県に暮らす子どもの人権をいたずらに侵害している、その状態を改善したいという一点にございます。

 そこで岡議員に、代表質問で議員が表明されたご意見につきまして二点、お尋ねいたします。

  1. 議員は「拉致問題等が解決されるまで予算の執行は留保するべき」という平成23年度の予算特別委員会の付帯決議を支持されていらっしゃいますが、日本に生まれ、日本に暮らす児童生徒の学ぶ権利を支援する補助金を停止することが、朝鮮民主主義人民共和国による拉致問題の解決に具体的にどのような効果があるとお考えでしょうか。
  2. 埼玉県による私立学校運営費補助金が停止されて十年が経過いたします。この間、厳しい財政状況の中で学ぶことを余儀なくされることで、埼玉朝鮮学校児童生徒の学習権が侵害されていることについてどのようにお考えでしょうか。

 互いの違いを認め合い、誰もが差別や不合理な扱いを受けることなく共に生きることができる社会、そんな魅力的な埼玉県にするために私たちも努力してまいりたいと考えております。上記質問に対する議員のお考えをうかがい、今後の活動の参考にしたいと考えます。

 ご多忙の折まことに恐縮ですが、上記質問に対し、5月31日までにご回答をいただきたく、ここに公開質問状を差し上げます。

誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会
共同代表
 磯田三津子(埼玉大学准教授)
 猪瀬浩平(明治学院大学教授・NPO法人のらんど代表理事)
 内田淳(さいたま市民活動サポートセンター利用者の会共同代表)
 小田原琳(東京外国語大学准教授)
 中川律(埼玉大学准教授)
 渡辺雅之(大東文化大学教授)