「知事への提案」に対して、大野元裕埼玉県知事からご回答いただきました

10月25日に大野元裕埼玉県知事にお送りした「知事への提案」に対して、郵送でご回答をいただきました。大野知事には県政への真摯な取り組みに敬意を表します。

ご回答を以下に転載させていただきます。


誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会 共同代表 渡辺雅之様

渡辺様には、日頃より民族や国籍等の違いにかかわらず、お互いの人権を尊重しながら共に生きる社会の実現にご尽力をいただき、心より感謝を申し上げます。また、感謝のお言葉をいただき大変恐縮です。

いただいたご要望に順次お答えをいたします。まず、本県でもヘイトスピーチ規制に関する条例等の制定に向けて検討を開始するべきではないかとのお話についてです。

私はヘイトスピーチ解消法起案者の一人であり、国会議員時代から国籍を理由に差別することには一貫して反対してきました。貴会の声明にあるとおり、本邦外出身者に対する不当な差別的な言動は断じて許されるものではなく、地域社会から徹底して排除されるべきものです。平成28年6月に施行されたいわゆるヘイトスピーチ解消法では、自治体に対し、国との適切な役割分担を踏まえて地域の実情に応じた施策を講じることを求めています。川崎市などでは、市内においてヘイトデモが頻発し、看過できない状況になったことから表現の自由等とのバランスに十分留意しながら、罰則を盛り込んだ条例を制定しましたが、本県では、現状、ヘイトスピーチに該当する言動が各地で頻繁に行われている状況にはなっていません。

条例等による規制は一つの考え方ではありますが、私は、まずはヘイトスピーチ解消法の適用を見守り、当該法律に掲げる理念の県民理解の促進にしっかりと取り組んでいくことが重要だと考えています。

いずれにしても、引き続き、先行自治体における条例制定の効果等をしっかりと伺いながら、必要な検討を行っていきたいと思います。

次に、私と関係部局による埼玉朝鮮学校への訪問を計画してほしいとのお話についてです。

私は、知事就任前の昨年7月に埼玉朝鮮学校を訪問し、教師や父兄の方々と面談し、県民の理解を得る方途を考えていきたいと意見交換を行っています。現時点でもその思いの実現にいささかの躊躇もありません。

しかしながら、県民の代表である県議会は、県運営費補助金の交付に関し「県民の理解が得られない。学校側から県からの要請にしっかりと応えるとともに、拉致問題等が解決されるまでは予算の執行を留保すべき」との附帯決議をしています。また、国は就学支援金に係る訴訟に関し、朝鮮総連が朝鮮学校の教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしている懸念があると一貫して主張し、全国5か所の訴訟のうち3か所で国の勝訴が確定している状況にあります。

こうした状況を総合的に判断すれば、運営費補助金を不交付としている状況に変化がない現時点では、私の訪問は適切ではないと考えています。現状を何とか改善したいとする皆様の強い思いは私も十分に理解しているつもりですが、この点は何とぞご理解いただきたいと思います。所管する学事課長には、引き続き、埼玉朝鮮学校を訪問し、運営状況を確認するよう指示しています。

貴会の益々のご繁栄を心よりお祈りいたします。寒暖の差が大きい季節です。どうぞご自愛ください。

令和2年11月5日

埼玉県知事 大野元裕