朝鮮学校をもっと知る その3  外国人学校への寄付

 昨年度の埼玉朝鮮初中級学校の収入(約9,200万円)のうち、寄付金の占める割合は43.5%で、授業料の46.9%についで高い割合になっています。全国の全ての朝鮮学校にとって、寄付は重要な財政基盤なのですが、自前の学校運営にも差別があるのです。

 日本の学校やインターナショナルスクール等は、寄付を集めやすくするよう税制上の優遇装置を受けていますが、朝鮮学校や中華学校はその優遇措置の対象から外されています。

 寄付には学校の改築工事への寄付などに適用される税制上の優遇措置である「指定寄付金」制度と、通常の「一般的な寄付」があります。

 「指定寄付金」制度とは、公益を目的とする事業を行う法人等に対する寄付金のうち、学校の改築工事など、公益性が高く緊急を要するものであって、多くの人を対象に募集される寄付については、「指定寄付金」として学校等への一般的な寄付よりもさらに手厚い優遇措置を寄付者は受けることができます。個人としての寄付にも一定額まで所得控除が認められ、とりわけ法人なら寄付金がすべて「損金(経費と同様に算入)」扱いされるので、法人からの寄付を集める上で非常に効果のある制度なのです。例えば、所得1,000万円の個人が100万円を寄付した場合、32万円も税額が軽減されるのです。

 では、「一般的な寄付」ではどうでしょうか。日常的な学校運営費等への寄付については、「特定公益増進法人」という税制度上の優遇措置が適用されます。この制度は日本の私立学校には従来から適用されていますが、2003年4月からは各種学校認可を受けた外国人学校の中でも、「ビジネスビザ」で日本に来ている人や外交官の子どもたちが通い、さらに欧米系の学校評価機関の認定を受けているものについては、日本の私立学校同様、この「特定公益増進法人」として、寄付金への税制優遇がなされるようになりました。この要件は事実上、インターナショナルスクールだけが対象になりうるものなのです。

 日本の学校やインターナショナルスクールも日本への投資促進に繋がるので「公益」、でも朝鮮学校や中華学校は「公益」に値しないというのが、日本政府の立場なのです。朝鮮学校と中華学校はこのような差別処遇について、2006年3月に日本弁護士連合会(日弁連)に申立てました。日弁連は2008年3月には「これは人権侵害である」として、日本政府に対し早急に是正するように勧告しましたが、未だに是正されていません。

 日弁連・人権擁護委員会の調査報告書では「むしろ寄付金依存の経営とならざるを得ない中華学校や朝鮮学校にこそ(指定寄付金等の適用が)積極的に行われるべきである」、「逆にこれらの学校をその適用から排除することは、ひいては中華学校・朝鮮学校における学校経営を不可能ないし困難な状況に陥らせ、これらの学校教育を行う自由及びこれら学校に通い又は通おうとする児童・生徒の学習権を実質的に侵害するという形で権利侵害と不利益を発生させるもの」と述べています。

 寄付金問題は、助成金・補助金問題と共に、学校の存続に関わる最重要問題の一つなのです。

2021年度在日朝鮮学生美術展 東京展(in 埼玉)のご案内
期間:2021年11月30日〜12月5日
時間:10時〜18時(最終日15時まで)
会場:埼玉会館(さいたま市浦和区高砂3-1-4:浦和駅徒歩7分)
入場無料
https://www.gakubi1972.com/

埼愛キムチ新聞第9号(2021年11月13日発行)より


「埼愛キムチ新聞」は埼愛キムチの頒布会毎に発行しています。このページやPDF版を、周りの方々にぜひとも広めていただき、埼玉朝鮮学校をはじめ朝鮮学校の現状を多くの方々に知っていただけたらと思います。