2022年4月28日のさいたま市教育委員会の細田教育長の回答と文書修正について

2022年7月27日
誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会

 私たちは、本年4月14日に細田眞由美教育長に対し、「〈外国人学校児童生徒補助金制度〉の見直しについて」に関する公開質問状を提出しました。2017年3月16日に作成された同文書には、「外国人学校に通う児童・生徒は無償である本市の市立小・中学校を選択することも可能である状況からも、 制度を見直す必要があると考える。所得にかかわらず支給していた従来の制度を見直し、一定の所得以下の保護者に対し補助金を支給する。(所得制限の導入)」という文言が記されております。

 これについて、私たちは、日本の公立学校で外国人の子どもらへの民族教育が保障されない中、民族教育を受けるためには朝鮮学校などの外国人学校に通うしかないという現実を無視し、民族教育の権利及びその意義を限りなく軽視している点、またさいたま市が掲げる多文化共生とも相いれないことから、同文書は撤回または修正されなければならない内容であることを指摘し、それへの見解を質してきました。

 これに対し、細田眞由美教育長からは4月28日付で回答文書をいただきました。

「教育委員会として見解が十分に伝わらない表現であることに対し、配慮の必要性を感じたところです。つきましては、教育委員会では、改めて当時の担当などから聴取を行い、ご指摘の文書に関して、正しく見解が伝わる文章とすべく、文書表現を改めた文書を作成し、保管することとしました」

https://tomoni-saitama-koreanschool.org/2022/05/24/post-780/

 また後日、冒頭の引用箇所について以下の文章に変更したという連絡がありました。

「外国人学校を選択する様々な理由はあるが、保護者の経済環境は同一でなく、 十分な所得がある保護者へ補助金等を交付する必要性は低いと考えられることから、所得にかかわらず支給していた従来の制度を見直し、一定の所得以下の保護者に対し補助金を支給する。(所得制限の導入)」

https://tomoni-saitama-koreanschool.org/2022/05/24/post-780/

 私たちは、教育委員会が当事者である保護者や当会の意見を受け止め、改善を図ろうとする姿勢を評価したいと思います。しかし、単に所得制限導入時の理由付けの文書表現に瑕疵があったということを問題と考えているのではありません。

 「外国人学校に通う児童・生徒は無償である本市の市立小・中学校を選択することも可能である状況からも」という文言は「教育委員会として見解が十分に伝わらない表現」といった曖昧なものではなく、むしろ「経済的負担を避けたいなら日本の公立学校に通えばいい」という見解が明瞭に伝わってきます。問題の本質はこのような発想に基づいて所得制限導入が安易に論ぜられ、実施されていることです。日本の公立学校ではどんなに裕福な家であっても無償教育が保障されます。外国人学校保護者補助金制度は、民族的マイノリティの民族教育へのニーズを充足することを当然の権利と認め設定されたものです。つまり、民族教育が保障されない公立学校の代替教育機関として、外国人学校での教育を保障していこうという考え方から設けられたものであり、故に、制度開始時より公立学校と同様に所得制限が設けられてこなかったのです。

 私たちは、4月11日に発表した公開質問状で下記のように言及しました。

外部監査の意見を無条件に受け入れ、制度「改変」に至った教育委員会の判断にも問題があったという認識でおります。そもそも行政は外部監査の意見をそのまま聞き、取り入れなければならないというものではありません。監査意見を受けての判断は行政が主体的に行うものであり、事実、監査報告の他の部分の指摘については、特段の事業変更を行っていない項目もあります。

https://tomoni-saitama-koreanschool.org/2022/04/14/post-748/

 教育委員会は、所得制限導入の「理由」とした文言の瑕疵を認めたのならば、理由とならない「理由」によって取られた所得制限の導入措置自体を白紙に戻すべきです。さらに言えば、さいたま市の補助金額は近隣市と比べても低額であることからも、その増額を図るべきであると考えます。

 私たちは、さいたま市教育委員会が、本市で暮らし学ぶすべての子どもたちの学習権を保障する立場からの教育行政を推進していただくことをこれからも強く願います。

声明