朝鮮学校をもっと知る その8 大野元裕埼玉県知事と補助金停止問題

 先日開催された《誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会》の『第7回公開学習会・埼玉朝鮮学校補助金停止問題のこれまでとこれから ~共に生きる社会のために!~』のエンディングで行われた埼玉朝鮮学園理事長の挨拶を転記します。現学校保護者でもある理事長の言葉はすべての保護者、卒業生を代弁するものです。


 埼玉県が、2010年度の補助金の支給を停止してから、10年以上経ちました。来年春に卒業する中級部3年生の多くが、補助金支給停止の2011年3月当時は埼玉朝鮮幼稚園の年少組の児童でした。今年度も補助金が支給されなければ、中級部3年の子どもたちは、補助金の恩恵を一度も受けることなく卒業となります。言うまでもなく、朝鮮学校・幼稚園に通う子ども達は、埼玉県民であり、その保護者は日本の方たちと同じ条件で、納税の義務を果たしています。埼玉県で生まれ、育ち、学んでいる子ども達ですが、いったい、なぜ通う学校によってこれほど教育環境に差が出てしまうのでしょう。

 埼玉県の大野知事は、知事就任前の2019年7月に埼玉朝鮮学校を訪問し、理事や学校保護者と面談をしたことがあるのですが、その席上、知事自身が「私はヘイトスピーチ解消法起案者の一人」と述べました。また、「有志の会」が行った「知事への提案」に対して、2020年11月8日付でいただいた「回答」においても、

  • 自身がヘイトスピーチ解消法起案者の一人である、
  • 国会議員時代から国籍を理由に差別することには一貫して反対してきた、
  • 本邦外出身者に対する不当な差別的な言動は断じて許されるものではなく、地域社会から徹底して排除されるべきもの、

と明言しています。しかしながら大野知事は引き続き補助金支給に応じず、その理由の一つとして「県民の理解が得られない。学校側から県からの要請にしっかりと応えるとともに、拉致問題等が解決されるまでは予算の執行を留保すべき」との2012年3月の附帯決議を上げ続けているのです。

 本日の公開学習会で改めて確認された通り、補助金不支給は不当な差別であり、断じて容認できることではありません。のみならず、補助金不支給の理由を自らの政治信条や判断ではなく、「県民の理解」に転嫁している大野知事の姿勢は、厳しい批判を受けなければなりません。加えて、自らを持って「ヘイトスピーチ解消法」の意義と精神を貶めているとも言えるでしょう。

 私は埼玉県で、川口で生まれ育ち、大宮で学び、そして現在も埼玉で生活する埼玉県民です。差別を容認し、外国にルーツがある子どもたちの学習権を奪い続けることが「県民の総意」とは思っていませんし、また、そうであってはいけないと強く思っています。

 本学園への補助金再開の動きが、埼玉県を、誰もが共に生きることのできる地域・社会へと変えていく一助となるよう、頑張って行きたいと思います。

埼愛キムチ新聞第16号(2022年11月12日発行)より


「埼愛キムチ新聞」は埼愛キムチの頒布会毎に発行しています。このページやPDF版を、周りの方々にぜひとも広めていただき、埼玉朝鮮学校をはじめ朝鮮学校の現状を多くの方々に知っていただけたらと思います。