埼愛自由日記・その⑦ 行政による人権侵害を考える

 「朝鮮学校の補助金は人権の問題ではないんです」。2022年11月、朝鮮学校保護者と埼玉県人権・男女共同参画課との面談の場において同課課長が冒頭に放った言葉である(埼愛キム新聞17号参照)。

 朝鮮半島にルーツを持つ子ども達が自らの言葉や文化を学ぶことを著しく困難とさせ、埼玉弁護士から「重大な人権侵害」として警告を受けている補助金不支給の問題を、埼玉県においての人権施策を担当する人権・男女共同参画課が何の問題もない、人権「外」の事柄として切って捨てた言葉として私は受け止めている。

 行政が堂々と人権侵害の主体となる行為は、同時期に東京都でも起こった。アーティストである飯山由貴さんの映像作品で触れられた関東大震災時の朝鮮人虐殺について、都知事の歪んだ歴史認識に忖度した東京都人権部が、「懸念」という事実上の検閲と上映中止を強行することにより、虐殺という究極の人権侵害とも言うべき歴史的事実でさえも行政が否定した。

 群馬県による「群馬の森・朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑」の強権的な撤去の問題は、悲惨な歴史の記憶と反省にとどまらず、友好を誓った人々の想いを根底から破壊した暴挙として記憶されたはずだ。日本の植民地支配の歴史の証人である在日朝鮮人にとって、追悼碑が無機質な重機によって撤去されていくその様は、自らの“存在の撤去”に映ったに違いない。

 「行政による人権侵害」にフォーカスし、それらに抗っていくために、「誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会」共同代表の宮﨑理さん、飯山由貴さんとともに、「行政による人権侵害を考える会・関東」を立ち上げた。継続した学習や交流の場としたい。

埼愛キムチ新聞第25号(2024年5月18日発行)より


「埼愛キムチ新聞」は埼愛キムチの頒布会毎に発行しています。このページやPDF版を、周りの方々にぜひとも広めていただき、埼玉朝鮮学校をはじめ朝鮮学校の現状を多くの方々に知っていただけたらと思います。