朝鮮学校をもっと知る・その⑩  埼玉弁護士会の決定書(警告)

「しっかりと受け止める。」
「具体的にどう受け止めるかについては、うまい答えが見つからないので、答えようがない。」

 これは、今年の2月14日に行われた補助金再開を求める埼玉朝鮮学園関係者と、補助金問題の担当である埼玉県総務部学事課との話し合いの場において発せられた同課職員の言葉である。

 埼玉弁護士会は県の補助金停止問題に対し、2013年に会長声明を出し、2015年には、埼玉朝鮮学園からの人権救済申立を受け調査、検討した結果として県への「決定書(警告)」を出した。

 朝鮮学校の処遇に関して「警告」が出されたのは全国の弁護士会を含め初めての極めて異例のことであり、この問題が如何に深刻な人権侵害を引き起こしているかということを如実に示していると言える(「決定書」の「第1・主文」及び「第4・判断・3結論」で「極めて重大な人権侵害と言わざるを得ない」と記述)。

 続けて学園関係者が、「人権損害についてどう考えるか」と聞くと、職員は「人権侵害はあってはいけないことであると考えている」と返答した。さらに学校関係者が、埼玉県は弁護士会の警告以降も補助金停止を継続しているのだから、警告に対して、不服なり反論があるのではないかといった趣旨の質問をしたのだが、「この質問については文書で出して欲しい」とし、明確な回答を避けた。

 弁護士会の警告については、昨年度にあった埼玉県県民生活部人権・男女共同参画課と学校保護者との交渉の場においても、同課課長が「(弁護士会の警告は)一団体の見解に過ぎない」といった趣旨の発言をした経緯がある(後日、この事が新聞報道されると、あわてて否定)。

 弁護士会の警告の内容は、日本国憲法や日本が批准している国際人権諸条約を根拠に展開されており、「一団体の見解」として矮小化すべきものではない。また、「人権侵害はあってはいけない」と言いながら、「重大な人権侵害」を十年以上にわたって継続している埼玉県が、「しっかりと受け止める」とは到底容認できない対応である。県民に対しては耳障りの良い「人権尊重」などの美辞麗句を連ねた施策を推進しながらも、自らが引き起こしている人権侵害は無視、隠蔽し続ける態度に終始している。

 警告が出されて8年以上の月日が経つが、このことを風化させてはいけない。まごうことなき「官製ヘイト」の具体的根拠として、警告についての埼玉県の対応を問うていきたい。

埼愛キムチ新聞第24号(2024年3月9日発行)より


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