埼玉県県民生活部人権・男女共同参画課に公開質問状を提出しました

 2023年1月に埼玉朝鮮学校の保護者が補助金再開に関して埼玉県の人権・男女共同参画課を訪問した際、同課課長が補助金不支給は「人権の問題ではない」などと述べたことに対して、有志の会は、教育の機会の平等や民族差別などに関する県の見解を問う公開質問状を、5月29日に提出しました。

 埼玉県の人権・男女共同参画課から回答がありましたら、ご報告させていただきます。


2023年5月29日


埼玉県県民生活部人権・男女共同参画課
課長  小川美季 殿

公開質問状

 私たちは「誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校補助金支給を求める有志の会」と申します。私たちは会の名称にあるとおり誰もが共に平和のうちに生きられる社会の実現に向けて活動しております。活動内容やステートメントについては当会のホームページ(https://tomoni-saitama-koreanschool.org)をご覧いただければと思います。

 さて、2022年12月21日と、2023年1月18日、埼玉朝鮮初中級学校の保護者が人権・男女共同参画課を訪問し、埼玉弁護士会がこれまで、埼玉朝鮮学校に対する補助金(運営交付金)停止に対して不当とする会長声明や、人権救済の観点からの「警告書」を出していることに関して、人権・男女共同課の見解を伺ったことを、関係者から聞き及びました。その際、人権・男女共同参画課の職員は「ここは人権侵害を判断するところではない。法務局に行ってくれ」、「埼玉弁護士会の会長声明や警告は一団体の見解に過ぎない」と応答され、「弁護士会の警告書は読んだが、運営交付金の不交付は人権の問題ではない」と小川課長自らお答えになったことが分かりました。小川課長は、2月22日にも保護者が用意した抗議文を直接受け取ることを拒否したとのことです。

 この件に関わって以下、質問いたします。

1、埼玉県人権施策推進方針では、冒頭に、「すべての県民がお互いの人権を尊重しながら共に生きる社会を実現する」ことを理念として、人権施策を進めるとされ、「一人ひとりが個人として尊重される社会」、「機会の平等が保障され、一人ひとりの個性や能力が発揮できる社会」、「一人ひとりの多様性を「一人ひとりの多様性を認め合い、共に生きる社会」認め合い、共に生きる社会」という3つの目標が示されています。埼玉弁護士会の会長声明や警告書も、この点と重なるものではないでしょうか。なぜ、警告書に示されている補助金不交付について、「人権の問題ではない」と言えるのでしょうか。声明や警告書の内容に基づき、見解を教えてください。

2、朝鮮学校に通うことは、朝鮮半島にルーツのある子どもたちが自らの民族の言語や文化を学ぶことであり、彼ら、彼女らの「一人ひとりの個性や能力が発揮できる」ようにするためにも重要であると考えます。一方、補助金の不支給はそうしたことの実現に不利益な影響を与えるものです。学校の運営が一層困難になるとともに、県が補助金を支給しないことで、朝鮮学校や、そこに通う子どもたちを平等に扱わなくてもいいという差別意識を助長させることにもつながります。ひいては社会的問題であるヘイトスピーチを招くものと言えます。この問題は朝鮮学校に通う子どもたちの教育を受ける権利「機会の平等が保障され、一人ひとりの個性や能力が発揮できる社会」の軽視だと考えますが、その点についてのお考えをお聞かせください。

3、 県は、朝鮮学校への補助金の不支給の理由として、埼玉県議会予算特別委員会の附帯決議(2012年3月19日)において、「拉致問題等が解決されるまでは予算の執行を留保すべき」と述べられていることを挙げています。これは、朝鮮学校が朝鮮民主主義人民共和国や朝鮮総聯と関係のある人びとの学校だからという理由で補助金を支給しないというものです。つまり、単に在日朝鮮人の学校だからという理由だけで補助金を支給しないということです。このような理由で補助金を不支給にすることは、民族に基づく差別であると考えますが、お考えをお聞かせください。また、人権問題や差別ではないというのであれば、その理由をお聞かせください。

4、冒頭に述べましたように、これまでの埼玉朝鮮学校保護者に対して、人権・男女共同参画課は、「補助金の問題は学事課に行ってください」、「運営交付金の不交付は人権の問題でない」と回答しただけでなく、2月22日は課長が在室しているのにもかかわらず、面談と抗議書の受け取りを求める保護者の訴えを取り合ってはくれませんでした。「すべての県民がお互いの人権を尊重しながら共に生きる社会」や「一人ひとりが個人として尊重される社会」を実現するためには、人権を傷つけられたと訴える人びとの声に誠実に耳を傾けることが必要であり、人権・男女共同参画課が県民に先立ちその範を示すべきであるはずです。人権侵害を訴える県民の声をどのように受け止めるべきであるのかについて、お考えをお聞かせください。
 また、今回のような人権・男女共同参画課の態度が、朝鮮学校に通う子どもたちやその保護者たちの人権を軽視してよいという風潮を生み出すことにも繋がりかねませんが、この点についてもお考えをお示しください。

5、現在、在日朝鮮人や朝鮮学校が、ヘイトスピーチの対象とされることがあるのは周知のところです。「一人ひとりが個人として尊重される社会」や「一人ひとりの多様性を認め合い、共に生きる社会」の実現には、在日朝鮮人や朝鮮学校に対するヘイトスピーチをなくすことが不可欠であると考えます。以下「ヘイトスピーチ解消法」第四条にも示されている、地方公共団体の責務に基づいて、この件に関して、人権課としてどのような方策を講じるか(講じているか)を教えてください。

(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施するとともに、地方公共団体が実施する本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有する。
2 地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。

ヘイトスピーチ解消法

 本会の共同代表が本件に関して情報の共有や解決に向けての協議・面談をお願いしたところ(4月7日)、「面談することはできない」との返答が課員の方からございました(4月11 日)。補助金交付の直接の管轄は学事課であることは承知しておりますが、本件は補助金問題のみに収斂できるものではありません。埼玉県民でもある在日朝鮮人の人権に関わる構造的な問題であり、ひいては県内に住む人々にかかわる人権の課題でもあると言えます。よって本会は、人権尊重を推進する人権・男女共同課に一県民として話し合いの場をお願いしました。繰り返しになりますが、人権・男女共同課は、県内の人権に関わる様々な課題の解決に向けて取り組んでいる組織だと認識しております。

 最後になりますが、人権・男女共同参画課におかれましては、「一人ひとりが個人として尊重される社会」や「一人ひとりの多様性を認め合い、共に生きる社会」、「機会の平等が保障され、一人ひとりの個性や能力が発揮できる社会」に向けて、一層の取り組みを推進されることを願っております。本会も何かお力添えできることがあれば、ご協力させていただきたく存じます。 公務ご多忙のおり、恐縮ですが誠意あるご回答をいただきますよう伏してお願い申し上げます。

誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会
共同代表
 磯田三津子(埼玉大学准教授)
 猪瀬浩平(明治学院大学教授・NPO法人のらんど代表理事)
 小田原琳(東京外国語大学教授)
 中川律(埼玉大学准教授)
 渡辺雅之(大東文化大学特任教授)

声明