埼玉県県民生活部人権・男女共同参画課に再び公開質問状を提出しました

 有志の会では、埼玉朝鮮学校の保護者に対し、補助金の不支給は人権の問題ではないと答えたことについて、2023年5月29日に埼玉県県民生活部人権・男女共同参画課に公開質問状を提出しました。提出にあたり、人権・男女共同参画課との意見交換を求めましたが、面会時間として示されたのは15分だけでした。有志の会の共同代表だけでなく、朝鮮学校の保護者も同席しましたが、議論を深めるにはあまりに短い時間でした。この場で、朝鮮学校に通う子どもたちや、在日朝鮮人に対するヘイトスピーチや、それを許す偏見の問題についてどう解決するのか、継続的に議論することを要請しました。

 人権・男女共同参画課から、2023年6月18日の消印で課長名による回答をいただきました。しかし、補助金の問題は学事課が担当することが示されるのみで、補助金不支給を人権問題として指摘した埼玉弁護士会の「決定書(警告)」についての見解など、本来、人権・男女共同参画課が所管するはずの人権問題と絡んだ質問についてお答えいただけませんでした。

 これを受けて有志の会で議論し、「公開質問状・その2」を作成しました。提出にあたり、再びの面会を求めましたが、日程調整もままならず、時間がないということで拒否されました。そのため、9月7日に共同代表3名が直接人権・男女共同参画課を訪問し、趣旨説明ののち、「公開質問状・その2」を提出しました。対面した職員からは、補助金に絡む問題については学事課を窓口にする旨、再び応答がありましたが、朝鮮学校の生徒に対するヘイトスピーチなどについては取り組む旨の回答がありました。

 しかし、問題はヘイトスピーチだけではありません。ヘイトスピーチの火種となっている「在日朝鮮人、朝鮮学校、民族教育についての偏見」を如何に取り除くのかという課題があります。人権に関する施策を進めるのであれば、行政は、どのようなところに問題の根があるのかを探り、そのために当事者やその支援に取り組む人々と積極的に対話の機会を持つところから始めるべきではないでしょうか。それゆえ、十分な面談の時間さえ設けないという人権・男女共同参画課の一連の対応には極めて大きな問題があると考えます。

 有志の会としては、引き続き、補助金再開に向けて埼玉県と交渉を行うとともに、在日朝鮮人やその他埼玉県在住の外国人に対する偏見をなくし、誰もが共に生きる埼玉県をつくるための対話を、人権・男女共同参画課と継続できればと考えています。


2023年9月7日

埼玉県県民生活部人権・男女共同参画課
課長 小川美季 殿

公開質問状・その2
(公開質問状への回答に対する見解と再質問)

 御多忙のなか、私たちが2023年5月29日に提出した質問状について、2023年6月18日付で、小川課長自らご回答いただいたことに感謝いたします。

 しかし、残念ながら、いただいた回答は、わたし達が提出した公開質問状について十分にお答えいただいておりません。回答の冒頭に、私立学校補助金を所管するのは学事課であることが示されておりますが、その点は我々わたし達も十分に理解した上で、貴課にご回答いただきたいことをお尋ねしております。

 以下、この点を説明しながら、お答えいただいていない点にお答えいただくため、さらに質問をいたします。

1.「回答」に示された「補助金の不交付は、私立学校運営補助金の制度運営上の判断であり、当該補助金について権限を持たない人権・男女共同参画課で判断できる、または判断すべきではない、という趣旨で申し上げました。」についてです。

 補助金の不交付については、埼玉弁護士会の「2013年第13号 人権救済申立事件」対する2015年11月25日付けの「決定書(警告)」において、「よって、当会は貴県に対し、申立人に対する補助金の不支給という人権侵犯を直ちに止めると共に、申立人の権利を回復する適切な措置をとるよう警告する。」と言及されています。

 これは、補助金の不支給を県が判断した理由は、制度運営上の判断として許されるものではなく、差別、人権侵害に該当する事項であることを明確に指摘しているものです。

 この点について、貴課と埼玉弁護士会とでは見解が異なると理解してよいのでしょうか。

 また、そうである場合はその具体的根拠について、「決定書(警告)」の当該部分を明示のうえ、お答えください。

2.埼玉弁護士会の「2013年第13号 人権救済申立事件」対する2015年11月25日付けの決定書(警告)の「別紙 調査報告書」の結論においては、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、子どもの権利条約、世界人権宣言、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約等、日本国政府が批准し、各地方自治体にも法の拘束が及ぶ国際条約で保障されている権利が制約されている点に言及しています。

 日々、「すべての県民がお互いの人権を尊重しながら共に生きる社会」の実現を目指し、「埼玉県人権施策推進指針」の策定や「人権尊重社会をめざす県民運動」などを推進しておられる貴課においては、上記、国際条約についてどのような見解をお持ちでしょうか。

 なお、朝鮮学校等に対する補助金等の不支給については、当該国際条約の各委員会(2014年及び2018年の人種差別撤廃条約委員会の総括所見など)において、毎年のように勧告等が出されていることを申し添えておきます。

3.「回答」の「当課の対応が、子供たちや保護者の人権を軽視してよいという風潮を生み出すことに繋がるとは考えておりません。」についてです。

 2019年度末に起こった、さいたま市による埼玉朝鮮幼稚園に対するマスク不支給問題においては、まさに行政の対応により、「帰れ、死ね」などの文言が幼稚園や関係者にあびせられるという事案が発生し、新聞等(毎日新聞デジタル版2020年8月26日「マスクが配られた朝鮮学校幼稚園が浴びた「ヘイトの嵐」 そして…」など)で広く報道されました。このことは行政の対応がヘイトスピーチを引き起こすきっかけにもなりうることを示しています。

 埼玉県が朝鮮学校に補助金を支給しないことは、行政すらも朝鮮学校に対して差別的扱いをしていることを示す「官製ヘイト」となることをわたし達は憂慮します。実際、SNS等をみれば、補助金不支給と在日朝鮮人差別とを直結させる言葉にあふれています。人権問題を所管する貴課すらこのことについて何も応答しないのであれば、埼玉県においてもこのような風潮は追認・助長されるものとわたし達は危惧します。

 貴課は、行政が、時としてヘイトスピーチ等の人権侵害が差別を生じさせるきっかけとなることについて、どのようにお考えでしょうか。実際に朝鮮学校や通っている子どもたちに対して起こっているヘイトスピーチに対して、どのような理解をしているのかについてと合わせてお答えください。

 各項目の回答においては、省略せず、具体的にご回答ください。

 また、今後は貴課からの回答につきましては、回答日(送付日)の記載及び公印等の押印をお願いいたします。

誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会
共同代表
 猪瀬浩平(明治学院大学教授・NPO法人のらんど代表理事)
 小田原琳(東京外国語大学教授)
 須永和博(獨協大学教授)
 中川律(埼玉大学准教授)
 野村奈央(埼玉大学准教授)
 宮﨑理(明治学院大学准教授)
 渡辺雅之(大東文化大学特任教授)

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